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トコ
南紀エリアスポーツ合宿誘致推進協議会

和歌山県南紀エリア スポーツ合宿誘致からはじまるアクション

地域連携の第一歩は「納得感」をつくること。和歌山県・南紀エリアからはじまるスポーツ合宿誘致のアクションとは?

みなさんは和歌山県と聞いたとき、何を思い浮かべますか?

みかん、熊野古道は思いつきますが、和歌山県と聞いて最初に「スポーツ合宿」を思い浮かべる人は多くないでしょう。でも実は、年間約9万人もスポーツ合宿に訪れる、知られざる魅力があるんです。

和歌山県南紀エリアは特有の豊かな海・山の自然や温泉に恵まれた上に、1年を通して温暖な気候を特徴としており、まさにスポーツにうってつけの場所。地域一帯でスポーツ合宿誘致に取り組み、復興庁に地域活性のモデルケースとして取り上げられています。

南紀エリア随一の観光地である白浜町白良浜(南紀エリアスポーツ合宿誘致推進協議会提供)

今回取材するのは、南紀エリアスポーツ合宿誘致推進協議会の太地さん。民間の旅行会社から和歌山県白浜町の観光協会とユニークなキャリアを辿り、ご自身の経験を活かしながら南紀エリアのスポーツ合宿誘致の立役者となりました。

本記事では和歌山県・南紀エリアを舞台としたスポーツ合宿誘致の取り組みを紹介します。

「市町ではなく、エリアで呼び込む」地域連携のメリットとは

和歌山県・南紀エリアのスポーツ合宿誘致の立役者は、南紀エリアスポーツ合宿誘致推進協議会。なんといってもその特徴は、和歌山県の面積の3分の1以上の広い範囲に及びながらも、互いに連携し、市・町という単位ではなく6つを合わせた「エリア」としてのスポーツ合宿誘致を行っていること。

太地さんは地域で連携した集客のメリットについてこう語ります。

太地さん:和歌山県・西牟婁振興局の局長さんから、スポーツ施設の有効活用について相談いただいたのがきっかけです。当時、和歌山県は2015年に国体を開催する予定で、スポーツ施設の建設が進んでいました。開催終了後は立派なスポーツ施設ができていても、もしかしたら土日しか使われなくなるのかもしれない。スポーツ施設の稼働率をあげることが課題となっていました。

スポーツ合宿について語る太地さん(南紀エリアスポーツ合宿誘致推進協議会提供)

太地さん:施設の稼働率をあげようと思ったら、問い合わせの数を増やすことに目がいきがちかもしれませんが、私たちは「予約の取りこぼしを少なくする」という方向で考えました。

たとえば野球合宿の問い合わせがあったとき、ある町ではその時期は予約がいっぱいだったとします。そのとき、実は隣の町では受け入れられる可能性があるというケースが起きているはず。受け入れ数の最適な分配ができることで、町ひとつの稼働状況ではなく、「エリア全体で取りこぼし」をなくすことができると考えました。

また、今までできなかった規模での受け入れも可能になります。大規模な大会を開催しようと思ったら、ひとつの町では実施できません。複数の施設を利用すれば、実現できる選択肢が増え、施設のある地域全体が潤うことができます。

入会して1年はオブザーバー。ライバル同士でも協力してもらうための秘訣

旅行会社の経験もある太地さんがあらゆる情報網を駆使して考えた、エリアでのスポーツ合宿誘致のアイデア。しかし、見方を変えれば6つの市町は互いにライバル同士。来訪者を取り合う構造から、協力体制を構築していくのはとても骨の折れる作業だったでしょう。

しかし、太地さんは「市町の協力さえ得られれば成功する確信があった」と言います。

太地さん:やはり当初は「今まで自分たちの町に来ていたお客様が他の町に行ってしまうのではないか」という懸念からネガティブな意見もありました。既にスポーツ誘致に前向きな市町だったら尚更そうなります。

でも、「もし横の連携がとれるようになれば、これまで取りこぼしていたお客さんにも来てもらえるし、リピートにもつながっていく」と説得を続けていったら、そういうポジティブな意見にも賛同いただけるようになりました。

協議会の立ち上げ当初は、行政が主体。外貨を稼ぐ役割の観光部局と、地元とのネットワークもあり、スポーツ施設を管理している教育委員会の協働で成り立ちます。今では、民間の事業者を巻き込んで「おもてなしの勉強会」「アスリートのための食事のセミナー」などの研修や勉強会を主催しているそう。

首都圏での説明会(南紀エリアスポーツ合宿誘致推進協議会提供)

どのように官民一体となった組織体制をつくったのでしょうか。太地さんはこう語ります。

太地さん:実は、協議会側から各市町に「参加して欲しい」と営業活動をしたことはないんです。あくまでも「話を聞きたい」「参加したい」といった要望があったとしてもそこで入会を決めず、1年間はオブザーバーとして参加してもらい、活動に理解を得てもらって加入いただくようにしています。

年会費も負担いただきますし、納得感がなければ地域同士のコミュニケーションも上手くいかないからです。我々の活動を理解してもらったうえで、これからも他の市町が入りたいと言ってくれる輪が広がっていけばいいなと思っています。

「点」ではなく「面」で──さらなる市町同士のつながりを求めて

集客のためのホームページ作成や資料、営業など、すべてのプロモーション活動をエリア全体で行うことができ、さらに大きい規模の誘致も実現しています。

2018年バレーボール女子世界選手権、2019年ワールドカップバレーボールと2年連続で、カメルーン女子バレーボール代表の事前合宿誘致に成功。代表選手による地元の子どもたちへのバレーボール教室も開催され、協議会による取り組みは着実に実を結んでいきます。

カメルーン女子バレーボールナショナルチームの合宿受入(南紀エリアスポーツ合宿誘致推進協議会提供)

さらに、面でのつながりを象徴づけたのが2019年のラグビーワールドカップ。

上富田町でナミビア代表が事前合宿を行いました。

太地さん:ラグビーワールドカップのご縁で、上富田町にナミビアのオリンピックの陸上代表チームから事前合宿の問い合わせを受けました。上富田町には陸上競技場が無く、本来ならお断りしていたところですが、隣の田辺市には陸上競技場があるのでそこを利用してもらうという話ができました。

これも協議会が発足する前は想像もしていなかったこと。地域の“みんなの”資産をもとに集客ができるようになりました。

太地さん:また以前より、呼び込む手段も多様性が出てきたと思っています。すべての市町が立派なスポーツ施設を保持しているわけではないので、特にスポーツ施設が少ない市町は、他の市町にスポーツ目的の来訪者が流れていってしまうのではないかと懸念していました。しかし、蓋を開けてみると、施設が無い町はスポーツ合宿だけではない集客にチャレンジしています。音楽コンサートなどの文化的なものへと幅を広げていますし、ジャンルが拡張していったように思います。

2013年発足当時の年間受け入れ人数は2.5万人から、2018年には8.6万人。当初目標としていた10万人をいよいよ達成しそうです。今やスポーツ合宿誘致のロールモデルとも言える地域となった和歌山県南紀エリア。太地さんは最後に今後の展望を語ります。

太地さん:今後は数字だけではなく、もっと南紀エリアの全域まで広げて誘致活動のネットワークを広げていきたいと思っています。誘致もスポーツ合宿だけではなくいろんな形で行い、来訪者の多様性を増やしていきたいですね。

個別の市町で分断した取り組みをするのはなく、それらを内包する「エリア」としてお互いを補い合い力を合わせていく──。南紀エリアだけでなく、いろいろな場所・側面で求められていることのような気がします。協議会・民間・来訪者の共創が垣間見える取材となりました。

こうした動きがみられるのも、それぞれの市町が「自分ごと」として南紀エリアの活性化を進めていく強さがあったからこそではないでしょうか。5年におよぶ歩みが、南紀の魅力をより強いものにしています。

南紀エリアスポーツ合宿誘致推進協議会

国体開催に併せて新設された田辺市のスポーツパークと既に実績を上げつつある上富田スポーツセンターを中心に、多くのスポーツ施設が集積する南紀エリアは温暖な気候や自然に恵まれ、京阪神から近距離に位置するなど好条件を備えている。6市町連携のもとスポーツ合宿の誘致に取り組み、地域の活性化を図っています。

Writerfull-sato.com編集部
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