ヒト:日本ディスクゴルフ協会
トコ:誰もが楽しめるエコスポーツを開催したい地域の公園・自然
コト:ディスク1枚で年齢性別問わず盛り上がるサステナブルな競技
「ディスクゴルフ」というスポーツを聞いたことはありますか?ゴルフに似たルールのもとバスケット型のゴールにフライングディスクを入れる競技で、子どもからシニア世代まで手軽に楽しめることから現在日本でもプレイヤーが急増中のニュースポーツです。
ディスクゴルフの大きな特徴のひとつは、林間や小川などの地形をそのまま利用してコースを設置できる点です。常設コースもありますが、キャンプ場や公園、夏のスキー場、ゴルフコースなど、開催したい場所にゴールを置いて簡単に地域の自然や名所を活かした臨時のコースを設けることが可能なため、賑わいを創出したいさまざまな地域から大会開催について注目を集めています。
今回はそんなディスクゴルフの普及を目指す「日本ディスクゴルフ協会」の事務局長の横田浩さんと理事の諸岡通容さんに、ディスクゴルフの魅力や地域との関わりについてお話を伺いました。
実は既に50年以上の歴史あり
ディスクゴルフのルールは、ボールを用いた一般的なゴルフとほぼ同じです。スタート地点であるティーイングエリアからフライングディスクを投げ、バスケット型のゴールに入れるまでの投数がそのホールのスコアとなります。通常は9つもしくは18のホールをラウンドし、全ホールの合計投数の少なさを競います。ディスクは投げるだけでなく、転がしたりスキップさせたりすることや、複数枚のディスクを使い分けることも許可されています。ディスクを投げるだけ?と侮るなかれ、スロー前のルーティンに始まり、助走をつけてから全身を大きくしならせたスローフォームはダイナミックでとてもクール!風とコースの状況を読みカラフルなディスクの中から最適な1枚を選びだす、戦略性の高さもこの競技の大きな魅力のひとつです。
さらに遠投力や集中力なども必要ではありますが、体力に関係なく子どもでも活躍できるのがディスクゴルフの醍醐味です。もともとの自然を活かしたコースを歩き会話を交わしながらグループで楽しめ、ディスク1枚あれば誰でも手軽に始められることから、エコスポーツかつ生涯スポーツとして、現在欧米を中心に人気急上昇中。日本でもプレイヤーが急増中のニュースポーツなのです。そんなディスクゴルフは、どのような歴史があるのかまずお二人に教えていただきました。
横田さん「フライングディスクの元祖『フリスビー』がアメリカで1948年に開発され、世界中でフライングディスクを使ったスポーツの大流行が巻き起こりました。初めてディスクゴルフのトーナメントが行われたのは1969年のこと。その流行は日本にも上陸し、1985年には国営昭和記念公園にハーフコースが常設されます。尚、当協会は1986年に東京で設立されて今に至っています。ちなみに、私も1980年代に大学でフライングディスクのサークルに入って夢中になったひとりなんですよ。始めるのは手軽で簡単ですが、とても奥が深い競技です」
フライングディスクを使った競技はその後も広がりを見せ、現在ディスクゴルフを含め、10種類以上があります。ディスクゴルフ以外ではアメリカンフットボールのようにディスクをパスしながら運ぶ「アルティメット」や学校の体育の授業でも取り入れられている「ドッヂビー」などが有名です。
なぜ今ディスクゴルフが人気なのか
ディスクゴルフはその戦略性の高さとかっこよさ、さらに手軽に始められることが特徴とあって、老若男女問わず幅広い層の人々が楽しんでいます。日本ディスクゴルフ協会に所属するメンバーは年代別にクラスを分け、スコアによって得られる年間ポイントを競っています。競技人口が増えてきているのにはいったいどのような理由があるのでしょうか。
横田さん「コロナ禍の影響で世界的に非接触型のスポーツがトレンドとなりました。ディスクゴルフもそのひとつで特にアメリカでは急激にブームが再来しています。日本も例外ではなく、大会参加者数はコロナ禍前より約20%も増えました。人気の大会はエントリー開始から1時間で70名の参加枠が埋まってしまうこともあります」
諸岡さん「またコロナ禍とは関係なく、偶然にもボードゲームの愛好家の方がディスクゴルフに参入するという流れもあるんです。ボードゲームとディスクゴルフは大会への遠征や戦略的思考など共通点があるそうで、たくさんのボードゲーマーの方がディスクゴルフを楽しまれています」
“エコでサステナブル”という一面も
さらにここ最近人気を得ている別の理由として、ディスクゴルフのエコでサステナブルな面が注目されてきているそう。
横田さん「ディスクゴルフのコースはフライングディスクが空中を飛ぶことから、木立やアップダウンがあっても設営可能で、むしろそのような障害物があったほうが楽しいコースができます。足元に草があるラフの状態でも、雪上でも大丈夫です。常設コースを作る際も、自然を壊すような大きな造成工事をする必要はありませんし、臨時の特設コースは公園やキャンプ場などに比較的簡単に設営できて、ほぼ完全に原状復帰が可能です。こういう点で非常に環境負荷が低く、エコロジカルで持続可能なスポーツだと言えます」
諸岡さん「もちろん既存のゴルフコースでの開催にもフィットします。フェアウェーだけではなくホールの間の林間なども使うことができ、特に『アイアンコース』とも呼ばれるショートレンジのコースはディスクゴルフにはぴったりの距離感で、トーナメント会場にも適しています」
後編では、エコで楽しいだけでなく、地形を活かした開催のしやすさ等からもディスクゴルフに熱い視線を送る日本の各地域とその取り組みについて、引き続き日本ディスクゴルフ協会の横田さんと諸岡さんにお話を伺います。
- Writer二階堂ねこ
- https://twitter.com/nikaidoneko
奈良育ち、大阪の出版社勤務を経て、結婚を機に和歌山に移住。海のある街に猫と住む夢が叶ってごきげんな日々。猫記事から地域創生、医療記事まで、取材やインタビュー執筆をメインに活動しつつ、地域の魅力を発信したいフリーライター。