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魅力ある信濃町への移住を空き家リノベーションで支援するNPO法人「ざいごう」(1)

長野県信濃町は新潟県との県境に位置しており、国立公園である野尻湖と、黒姫山を有しています。夏は野尻湖でカヌーやカヤックなどのウォータースポーツにワカサギ釣り、冬はスキーやスノーボードなどのウインタースポーツを楽しめる、自然いっぱいの魅力あふれる町です。

信濃町の標高654mの高原に位置する野尻湖

その信濃町で「新しい”ふるさと”作りのお手伝い」をテーマに掲げ、移住支援に取り組んでいるのが「NPO法人ざいごう」です。「田舎好き.net」というホームページやFacebookなどを通して、信濃町への移住を検討している希望者に対して地域の状況や体験談などの情報提供を行っています。また「田舎好き倶楽部」を立ち上げ、移住者同士や地域の人たちをつなぐ各種イベントも開催しています。今回は、15年以上にわたって信濃町の移住支援に貢献している、代表の古澤良春(ふるさわよしはる)さんに取材しました。古澤さんが移住支援に取り組むようになったきっかけや、移住者への想い、今後の展望などについて、お話を伺います。

野尻湖、トウモロコシ、小中一貫校…数えきれない信濃町の魅力

まず、信濃町についてお伺いします。日本にはたくさんの移住先がありますがその中で、信濃町を選ぶ人はどのようなところに惹かれているのでしょうか?

「一番は野尻湖などの自然です。釣りやウインタースポーツが好きな人が移住してきます。あと、小中一貫校に魅力を感じて移住する若い方も多くいますよ」(古澤さん)

そう、信濃町には全国的にも珍しい小中一貫校「信濃町立信濃小中学校」があるのです。
元々信濃町には、1つの中学校と5つの中学校が存在していました。それが2012年に1つの学校に統合。学校では1年生から9年生までの一貫教育を行っています。2年生と8年生(中学2年生)が、仲良く一緒に帰って来る……そんな光景が見られるそうです。

さらに、交通の便が良いのも信濃町の魅力の1つ。高速のインターが近辺に2つあり、車を20分ほど走らせればたどり着けます。そこから、上越や軽井沢などさまざまな観光地にアクセスできます。

また食べ物も充実しています。特産物であるトウモロコシやピーマンなどの野菜はもちろん、実は魚もおいしいのが特徴です。長野県といえば海がない県という印象が強い方も多いと思いますが、信濃町は新潟との県境にあり、日本海に近いのです。町内から車を10分走らせれば、新潟県妙高市にたどり着きます。長野市内へも約30分で行けますし、長野駅からは新幹線もあるので、東京へのアクセスも良好。

このように、信濃町はとても魅力あふれる町なのです。

白いそばの花。信濃町ではそばも育てられています

「信濃町の役に立ちたい」と移住支援の任意団体を設立

「ざいごう」代表の古澤さんは魅力あふれる信濃町で建築業を営んでいます。古澤さんには息子さんが2人いますが、どちらも後を継ぐ予定はありません。2008年、当時60歳だった古澤さんは少しずつ事業を縮小させつつ、今後のことを考えていました。そして古澤さんは、あることに気付きます。

「空き家が多すぎるなと思ったのです。このままではどんどん町の家から明かりが消えてしまう。空き家をリフォームして綺麗にして、信濃町に移住したい人へつなげられないだろうか。自分が培ってきた建築の経験を生かして、町の役に立ちたい、移住者との架け橋になりたいと考えました。」

そんな古澤さんの想いに古澤さんの会社でPC全般を担当していた白濱さん、横浜から移住してきた荻原さん、新潟県で土建業を営む市川さん、そして古澤さんの奥さんの有志4名が賛同。「ざいごう」の前身である任意団体「チームZaiGo!」が結成されたのです。「ざい」は長野県北部で「田舎」を差す言葉。「田舎へ行こう!」という意味を込めて名づけられました。

「ざいごう」発足メンバー。写真中央が代表の古澤さん

インターネットを駆使して情報発信、注目を集めNPO法人へ

最初は4名で小さく始まった「チームZaiGo!」ですが、だんだん自治体の注目を集めるようになりました。

理由は大きく2つあります。1つは空き家活用や移住支援がまだまだ珍しかったこと、もう一つが、インターネットでの情報発信を積極的に行ってきたことです。「チームZaiGo!」のメンバーには、パソコンに強い白濱さんがいます。当時はスマートフォンもSNSも普及しておらず、情報発信のハードルが今よりずっと高かった時代。まだ誰もやっていないことをやってきたのが「チームZaiGo!」だったのです。

組織を大きくするにあたり、古澤さんたちは「営利目的ではないから」とNPOを選択。2011年に「NPO法人ざいごう」が誕生しました。

2023年10月現在「ざいごう」のメンバーは理事10名、社員5名で構成されています。1か月に1度理事会を開き、意見交換を実施。また年1回は総会を開催し、事業報告や決算報告を行っています。

「ざいごう」が掲げる目標、それは空き家を活用することで信濃町の人口増につなげることです。しかし人口を増やすのは、簡単なことではありません。なぜなら信濃町では高齢化が進み、寿命で亡くなる方が年間80人から100人にのぼるからです。その部分を新しく移住してきた人たちで補い、最小限の人口減にとどめたい。それが古澤さんたちの願いです。

空き家の価値を評価する移住支援のプロフェッショナル

気に入った空き家を見つけて移住するにあたり、希望者が最も不安なことは金銭面です。いくらかければ改装できるのか。自分たちの予算でどこまで修繕できるのかといったことは、なかなか素人では判断できません。しかしそこは建築業のプロである古澤さん。「だいたいこれだけお金がかかります」「これだけ予算があれば、このような結果になりますよ」と、知識と経験に基づいたアドバイスを移住希望者に対して提供できるのです。

「信濃町で気に入った建築屋さんがいればそこに頼んでもいいし、知り合いに建築をやっている人がいれば、その人に頼むのもいいと思う。ただ『これだけお金があれば住める』というたたき台は、出してあげないとね」

大きな仕事であれば、建築業仲間に依頼するものの、小さな仕事であれば今でも請け負うこともあるという古澤さん。中には「古澤さんがやってくれないなら、信濃町には住まない!」という方もいるそうです。

空き家問題を解決するには、不動産、建築、司法書士など、さまざまな分野のプロフェッショナルが連携して取り組む必要があります。その中でも一番のネックになるのは建物の評価。「この辺りは1平米あたりいくらです」と土地を評価できる人はいても、「この建物は築70年で、○百万円あれば住めますよ」と建物を評価できる人は多くありません。「ざいごう」でもそれができるのは古澤さんお一人です。もちろん、大手のリフォーム専門業者に評価を依頼することも可能です。しかし、それだとコストが高くなり、移住にあたってのネックになってしまいます。コストを下げ、その分移住者のハードルを下げたい。そう古澤さんは考えます。

古澤さんが営む建築業では、屋根の葺き替えの仕事も請け負う

なぜ古澤さんは、移住者の方たちに親身になれるのでしょうか。実は古澤さんご自身、生まれたときからずっと信濃町に住んでいたわけではありません。古澤さんもまた、50年前に信濃町に越してきた移住者でした。当時はまだ、新しく来た人に対する町の人たちの風当たりが強かったと語ります。

「越してきた当時は、村の集会に参加してもよそ者扱いでね(笑)。『あんたはこんなところに座るべきじゃないだろう。下座に行け』と村の人に言われたこともありました。」

そうして、村の仲間として認めてもらうのに、約10年の歳月がかかったという古澤さん。現在はもちろんそのようなことはありません。皆さん、移住者の方に優しく接しています。

「空いている家に、電気がついている。それだけでありがたいと、町の皆が考えています。このまま真っ暗な家がどんどん増えていくのは避けたいから、一生懸命やっていますよ」
「ざいごう」は移住者の不安を解決するために具体的にどのようなサポートを行なっているのか。そして移住者や関係人口を増やすためにどのような取り組みを行なっているのか。また、同じような課題を抱えている地域についてのアドバイスを、後編で伺います。

観音
Writer観音
https://kannnonn.com/

1985年生まれ。大阪府出身。自然豊かな生活環境を求めて2020年に長野県信濃町に移住。ヒップホップのトラックメイカーとして活動しながら個人ブログ「mozlog」(https://kannnonn.com/)を運営。フルサイズバンで車中泊しながら遊んで学ぶのが最近の趣味。