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佐野クリケットチャレンジ!!!は国際規格のクリケット場をどう活かす?

国内唯一!国際規格の広さのクリケット場をどう活かす? 佐野クリケットチャレンジ!!!の挑戦。

世界では競技人口数第3位と言われるイングランド発祥のスポーツ・クリケット。近年ではクリケットをオリンピック種目にしようとする動きもありますが、野球やサッカーに比べると、国内であまり馴染みのないスポーツかもしれません。ですが、実は日本にも、国際規格を満たす広さを備えるクリケット場があるのはご存じですか?

栃木県佐野市にあるのは、多くの国際・国内大会を開催している佐野国際クリケット場(以下、SICG)。日本で唯一の本格的なクリケット場として、スポーツの世界では有名な施設があるのです。そんなクリケット場を活かすべく、2018年からスタートしたというプロジェクトが「佐野クリケットチャレンジ!!!」です。佐野市スポーツ立市推進課で佐野クリケットチャレンジ!!!に携わる、萱原崇(かやはらたかし)さんと向田裕(むかだ  ひろし)さんに、プロジェクトの効果と課題についてうかがいました。


▲左、萱原崇さん。右、向田裕さん。

なぜ佐野市に国際クリケット場が?

広大な敷地に広がる芝生と、歴史を感じさせる校門や体育館。萱原さんや向田さんが取り組む「佐野クリケットチャレンジ!!!」が拠点とするのは、かつて栃木県立田沼高等学校のグラウンドだった場所です。実はこのグラウンド、日本で唯一、国際規格の広さを持つクリケット場なのです。なぜ佐野市にそういった施設ができたのでしょうか?

萱原さん「もともと、日本クリケット協会(JCA)の本部が佐野市にあって。グラウンドの広さに注目したJCAが、ここがまだ高校だった時から、クリケットの試合やパキスタン大使館のイベントを開催したりしていたんです。そして2013年に統廃合で田沼高校が廃校になってから、本格的にクリケット場として活用することになり。グラウンドは砂利でしたが、JCAの出資で先に中央だけ人工芝にしていき、クリケット場として最適な環境になるよう整備していきました。」

JCAはいずれ国際的なクリケット場にする方針を掲げていたものの、会場を維持するための予算が問題となっていたそうです。佐野市はクリケットが街を盛り上げることに繋がる可能性を考え、国の補助金制度を活用することを提案します。

萱原「地方創生推進交付金という国の補助金制度で、スタジアム整備が補助金対象事業になったことをきっかけに、2016年度末からクリケットを用いたまちづくりプロジェクトを打ち出しました。それが佐野クリケットチャレンジ!!!の始まりです。

当時スポーツツーリズムを市の基本方針として市長が掲げていたこと、インバウンドが見込めること、JCA本部がある佐野にしかできないこととして、クリケットとまちづくりが結びついたのです。」

向田さん「他にも、佐野市の河川敷にはもともと4つのクリケット場がありました。その上で国際大会も開催できる日本で唯一の場所が佐野市という点がチャンスだと考えたのです。クリケットは南アジアでは非常に人気のスポーツ。国際大会を開催するJCAがある佐野市だからこそ、クリケットでインバウンド需要も狙えると思いました。」

萱原さん、向田さんがまずはじめに行ったのは、芝生整備だけではなく、プレイヤーがちゃんと練習できるような環境を作ること。2016年末からクリケット場の整備がスタートしました。2017年には佐野市が主体になり、クリケット場のプロモーションイベントやマーケティング調査を行ったそうです。

クリケットチャレンジ!!!始動

2018年7月からは「佐野クリケットチャレンジ!!!」という名称でプロジェクトがスタート。「佐野=クリケットの街」というブランディングを強めました。実際に会場が整備された頃から、クリケットの選手が国内から移住するようになるなどの変化が見られるようになったそうです。

向田さん「クリケットの練習環境は、日本で一番整っている場所。クリケット選手の山本武白志さんは横浜出身ですが、佐野に移住してきたりと、選手には最適の環境です。JCAからも、東京に勤めるクリケット選手数名が佐野への移住を検討していると聞きます。」


▲佐野市に移住した、山本武白志選手。

 

萱原さん「海外での活動を目指すアマチュア選手も、佐野市に来て練習しています。首都圏からは特に海外からの移住者が、佐野市を訪れるようになりました。明らかに、今までにはなかった人の流れが、クリケットをきっかけに生まれているんです。市外の事業者からも、温泉施設へ誘致できないか、という相談があったんですよ。つまり市外の人からも注目されるような魅力がクリケット場にはある、ということ。とても嬉しく感じました。」

同時に、地元との繋がりを生み出すことも忘れませんでした。フィールドの整備が終わってから、佐野クリケットチャレンジ!!!のチームは佐野市の事業会社と連携し、クリケット場を活用する方法について考えるようになりました。今年4月には市民との交流接点の場所として“クリケットチャレンジ!!!ハウス”を佐野駅前にオープン。ハウス内には、クリケットグッズや佐野のお土産物を展示販売するセレクトショップと、コミュニティスペースとしてカフェを併設しています。

萱原さん「実は、2019年6月のインド人大会でアンケートを取ったところ、8割の人が佐野の店に寄らないということがわかったんです。競技場の近くにバーベキュー場をやったり、家族と遊べるような場所が欲しい、キャンプ場やログハウスなどの宿泊場所があると嬉しい、といった意見もあって。しかし現状の条例などを考えると、すぐには娯楽施設を整えることが難しいと思いました。

そこで駅前にあるカフェだったら、選手以外の、クリケットに興味がない人でも入りやすいと思ったんです。佐野駅前はカフェが少なく、お土産販売所も無いので、人も集まりやすい。そうやってクリケットを絡めながら、街を盛り上げられるよう、観光地としての環境を整えようとしています。ちなみにハウスの設計や建築、内装などは、全て市内の業者にお願いしました。運営も駅南の商店組合に頼んだりと、なるべく佐野市内のメンバーで完結できるようにしたかったんです。」

旧校舎やグラウンドの活用アイデアを求む

クリケットを通じ、佐野市を盛り上げることに挑戦する「佐野クリケットチャレンジ!!!」。今後もプロジェクトを拡大させようとする一方で、問題も抱えています。それは、グラウンドの維持・管理などの運営費がオフシーズンにもかさんでしまい、このままクリケット場を活用する方法を考えないと赤字になってしまうこと。萱原さんらは、今もなお解決策を模索し続けています。

萱原さん「実は、プロジェクトが始動した当初は校舎を活用し、クリケット選手が宿泊するための施設や、観客が訪れるような商業施設を検討していたんです。ただ、耐震診断の結果、この校舎が耐震基準を満たしていないことが発覚しまして……。市の運営する建物としては、耐震基準を満たしてない建物に人を集めることは難しいと判断しました。工事をするにも莫大な予算が必要です。

さらにこの場所は市街化調整区域のため、商業施設にすることは現在の条例解釈ではできません。クリケット場を補助金に頼らず運営していくために、今は新たな収益の核を検討することが課題となっています。」

今年からはクリケット場を活用したビジネスを行いたい人を集め、説明会を開催するなど、積極的にビジネス支援を行うために土壌を整えてようとしているそうです。

向田さん「ヨガやスパイクを使わないサッカーなど、芝を痛めないようなグラウンドの使い方なら、オフシーズンに利用機会が増えるのではないかな、と。また、最近ではクリケット大会に合わせ”クリケット&マルシェ”を開催し、地元の飲食店に出店いただいたり、お弁当の予約注文を受けられる仕組みを作ったりしています。そういったイベントをきっかけに、より多くの人がクリケット場の存在を知ってもらえれば、と考えているところです。」


▲クリケット場で開催されたヨガの様子。

また、佐野市では校舎・グラウンドをより多くの人に活用してもらえるよう、アイデアや協力者を募集しています。

萱原「クリケット部分はJCAも協力しますし、クリケット以外のグラウンドの利用も、クリケットがセットであれば相談可能です。競技場を使いたい方がいれば、条件付きで会場費を免除するなども検討できるようにしたい。僕たちも初めての試みが多い分、試行錯誤を進めながら、会場の活用方法の事例を蓄積していきたいと思っています。ぜひ実験的に利用していただきたいです。」

佐野市のチームにはU19に選出される選手も多く、将来が期待される選手も登場しています。いつか佐野市でクリケットに親しんだ子供たちがプロの選手になり、街ぐるみで応援…という未来も近いかもしれません。そのために必要なことは、会場を維持し続けること。今後、実験的にクリケット場や校舎を活用をしていく事例が増えれば、それが国内のクリケット競技人口を増やすことに繋がるかもしれません。

 

佐野クリケットチャレンジ!!!

施設・仕組み・企画などの様々な取り組みから交流・関係人口を増やし、佐野市の活性にチャレンジします! クリケットを活用した地方創生プロジェクト。めざすのは、「地方創生」×「多文化共生」その真ん中にはいつもクリケット。

Writer西山 綾加

岐阜県出身。学生時代からイベント制作に携わり、制作会社勤務を経て、旅行会社に転職。社会人2年目、巡り合わせでライター業を始める。音楽コミュニティー「SHAKE HANDS」所属。座右の銘は「袖振り合うも他生の縁」。新たなご縁を求めてひとり旅に出ることが趣味。