フルサト | full-sato.comフルサト | full-sato.com

コト
山都三大そばまつり

コロナ禍でも様式を変えて開催。「山都三大そばまつり」の手法を学ぶ。

コロナ禍でも様式を変えて開催。「山都三大そばまつり」の手法を学ぶ。

福島県喜多方市といえば「喜多方ラーメン」のイメージが強いですが、同じ「麺」繋がりで、そばも盛り上がっているのはご存知でしょうか。喜多方市山都町の名産であるそばは「幻のそば」とも呼ばれ、全国のそば好きからも評価されています。

山都町では毎年「山都三大そばまつり」というイベントが季節ごとに開催され、なんとそばをきっかけに12万人もの人が山都町を訪れるのだとか。

今年は新型コロナウイルス感染拡大の影響で、イベントを例年通りに実施することは難しくなってしまいましたが、「山都三大そばまつり」は形を変えて開催したそうです。外から人を呼ぶことが難しい状況の中、運営チームはどのようにイベントを存続させたのでしょうか。「Withコロナ」の状況下における、新たな町おこしイベントのあり方について、話を聞きました。

(左、喜多方市山都支所 産業建設課で雪室熟成そばまつりの担当する五十嵐さん、中央、新そばまつりを担当する長谷川さん、右、喜多方市企画調整課 政策調整室 企画調整班でふるさと納税を担当する中村さん)

幻のそば「宮古そば」と山都三大そばまつりとは

そもそも、山都町でそばの文化が盛んになったきっかけとは何だったのでしょうか。

五十嵐さん「山都町の宮古地区はソバの作付けに非常に適したところだったので、良質なそばが昔から作られていました。昭和30年ごろ、道路工事員に地元農家が振る舞ったそばをきっかけに、口コミでその評判が広がっていきました。しかし、当時の山都町にはそば屋は無く、普通は食べられない“幻のそば”と言われていたんです。その後、予約で営業をはじめる農家が徐々に増え、宮古そばを目当てに来客が増えていきました。」

宮古地区は標高が高く米作には不適な地域。そのためそばを日常的に食べる文化が根付いていたと言います。そんな評判の高い「宮古そば」を地域資源として盛り上げるために地元で組織が作られていきました。

長谷川さん「昭和59年に山都町商工会が宮古そばを町全体で誇れるものづくりとして目を付け 、山都そばと名称を変えて、同年11月に第一回新そばまつりが開催されました。これを皮切りに山都そばのブランド化や作付面積の拡大へ取り組んでいったのです。」

こうして始まった「山都そば」での町おこしは、イベントの多様化やそば店の普及へとつながっていきます。

長谷川さん「最初は新そばまつりから始まり、その後平成10年に”寒晒し(かんざらし)そばまつり”、そして平成20年に”かあちゃんたちの雪室(ゆきむろ)そばまつりそばまつり(現:雪室熟成そばまつり)”が始まり、今年度、令和2年度からは、“山都三大そばまつり”として開催するようになりました。」

▲昨年の新そばまつりの様子。新そばまつりは、山都町のメイン通りで8〜9店舗ほどのそば屋さんが屋台形式に並んで開催されていました。

▲昨年の寒晒しそばまつり様子。寒晒しそばは、江戸時代に徳川将軍家に献上されていた信州のそばの作り方を模倣して作っているそう。渓流の冷たい水にソバの実を浸し、その後20日〜1ヶ月ほど寒風に晒して自然乾燥させたソバの実を使って打ったそばを、山都体育館内で味わいます。

▲山都雪室熟成そばまつりでは、山都の雪を使った雪室に玄そばを保存し、夏まで貯蔵された玄ソバのみを使ったそばを楽しみます。

五十嵐さん「実は、山都町にはもともとそば屋は一軒もなかったんです。しかし、イベントを継続して開催してきたことで、今ではなんと21店舗もの常設のそば屋があるんです。」

現在営業中の常設そば屋で最も歴史のある店舗「元祖手打ちそばやまびこ」

増えたのはそば屋だけではありません。平成6年には3.5万人だった来客者数が、今では年間約12万人も訪れる地域となっていると言います。

五十嵐さん「県外だと新潟県から多く来られています。そばまつりでしか食べられないそばもあるため、リピーターも結構多いと聞きますね。またそば屋ごとにお客さんがいるので、そこから情報を得て来てくださるようです。」

コロナ禍での開催方法を探る

毎年3月に寒晒しそばまつり、8月に雪室熟成そばまつり、10月に新そばまつり…と、時期を重ねるごとに知名度を上げていった山都三大そばまつり。山都町に大きな賑わいを作り出すことになり、町の大切なイベントとなっていきました。しかし、今年は新型コロナウイルスの感染拡大により、開催が危ぶまれました。

五十嵐さん「市内はもとより、周辺の市町村のお祭りや地域イベントはほとんど中止になりました。山都町内のそば店への来客数もやはり激減しましたね。」

長谷川さん「毎年3月中旬に開催される寒晒しそばまつりも、今年は中止にしました。政府の要請もあり、今はやるべきではないだろうということで…。」

しかし、この状況下でもできることがあるかもしれない。そう思った喜多方市は、例年8月に開催する「山都雪室熟成そばまつり」を開催するために、様々な方向性を探ったそうです。

長谷川「イベント規制の緩和により、内容を検討すれば開催できるのではということで話が進んでいきました。実行委員会でも、今年何もしないと山都そばが忘れられてしまうのではということで、なんとか開催する方法を考えました。

しかし、例年通りの開催手法ではソーシャルディスタンスを考慮すると、来客数が減少するのは確実でした。そこで目を付けたのが、町の中にある常設店でした。」

▲山都町にある常設店のひとつ、宮古そば権三郎

五十嵐さん「山都町には今常設店が21店舗あるのですが、そのお店ごとにそばを提供すれば来客も分散されますし、それぞれの特徴あるそばを楽しんでもらえると考えました。実行委員会から常設店の各店舗へ声かけし、感染予防対策をしっかり行った上で開催することにしました。」

長谷川さん「コロナでそば店も大きな打撃を受ける中、イベントを打ち出すことによって、ある程度の集客を見込めるんじゃないかという希望も多くあり、多くのそば屋さんに協力いただきました。また、自店舗での提供ということで、屋台での出店よりも楽だという声もありました。」

「withコロナ」の中で開催

こうして新しい様式で開催することになった「山都雪室熟成そばまつり」は、7月11日〜9月30日まで、これまでにない長期間で開催されました。

▲雪室熟成そばまつり参加店舗には目印となるポスターを掲示。

五十嵐さん「長期間で開催することで、よりお客様の一極集中を避けることができると考えました。開催にあたって一番苦労したのが参加店舗への声がけと、コロナ対策の統一です。雪室そばまつりの参加には、雪室で熟成されたソバの実を使っていただくことが条件です。各店舗で使用される玄ソバを雪室に入れて寝かせてくださいと、1店舗ずつ回ってお願いをしたんです。」

長谷川さん「コロナ対策では、参加店舗全体で共通徹底が必要で、市の指針に沿った検温や手指消毒、定期的な換気、ソーシャルディスタンスを考慮した席配置の4つの対策を必ずしてもらうようお願いしました。」

五十嵐さん「細かいところだと、割り箸を席に置かないようお願いしたのが大変でした。これは、開催中にいただいたお客様からの声で対応したんです。」

細かなところまで気を配り実現させた「山都雪室熟成そばまつり」。新しい様式にチャレンジしたことは思わぬ発見もあったようです。

五十嵐さん「昨年までだと、新そばまつりで8〜9店舗、雪室熟成そばまつりえ5〜6店舗の出店だったところ、今年の雪室熟成そばまつりには、町中のそば屋さんのうち約3分の2(14店舗)のそば屋さんに参加していただきました。予想以上に多くの店舗に参加してもらえて非常に驚きました。」

長谷川さん「長期開催していたので、普段来られないお客様もいらっしゃったかと思います。スタンプラリーのやり方で、回遊促進を図りました。集客について各店舗に聞いたところ、雪室熟成そばまつりに関しては例年並みとの回答が多かったです。ただ、7月から始まり、コロナのこの状況を考えたら一定の効果があったと考えています。」

クラウドファンディングの実施と今後のそばまつりのあり方

こうして試行錯誤の上に新しい様式で開催された山都三大そばまつり。現在は次回開催に向け、クラウドファンディングを実施中です。コロナ禍でも多くの企業や団体がクラウドファンディングを実施していましたが、喜多方市が挑戦するのは、ふるさと納税を活用したGCF®(ガバメントクラウドファンディング)*という制度。これは、予め決められた寄付金の使い道に共感した方からの納税を募る、クラウドファンディング型のふるさと納税です。

中村さん「今年度から新たな財源確保のためにふるさと納税を活用したクラウドファンディングを展開したいと考えていました。ちょうどその時“山都雪室熟成そばまつり”のチラシが目に入ったんです。様々なイベントが中止になる中で、コロナ禍でもやり方を変え、官民が一体となって工夫して開催している様子に、これはGCFに掲載することで、より多くの人に知っていただけるのではと考えました。

注目の返礼品は山都の生そばです。賞味期限が3日と非常に短く、返礼品には不向きとされていましたが、やはり山都の美味しい生そばを食べていただきたいという思いから、地元そば店やふるさと納税事務局の委託先企業の協力のもと掲載が実現しました。」

▲中村さん一押しの返礼品「生そば」

ふるさと納税を利用したクラウドファンディングで集められた資金は、市のふるさとづくり基金に積み立てられ、その後、山都三大そばまつりの資金として活用されるとのこと。そんな今後のそばまつりについてうかがいました。

五十嵐さん「今は、寒晒しそばまつりの実施に向けて開催方式の検討をしています。分散型の開催方式は、集客面などで効果があった一方でイベント感に欠けるのが課題です。賑やかなお祭りにしたいので、山都のそば店が集結する以前の方式も状況に応じて検討したい。

そばを主軸に全国各地の人たちにもっと山都を知ってもらい、交流人口さらには関係人口を増やし、最終的には当市への移住定住を考えるきっかけになれば嬉しいです。また今後は、山都のものづくりとしてそば打ち道具にも注目していきたいです。」

▲そば打ちには多くの専門道具がありますが、その中でも重要とされるのが写真中央に写るこね鉢。山都町の「飯豊とそばの里センター・そば資料館」ではそば打ち道具一式の販売もしているそう。

山都町の誇り「山都そば」。そして、そばを盛り上げる「山都三大そばまつり」を絶やさぬよう試行錯誤を繰り返す喜多方市。各地でイベントの中止や開催方法の見直しが行われる中で、開催方法を探る際のロールモデルとして参考にしてみてはいかがでしょうか。

※GCF®︎(ガバメントクラウドファンディング)は株式会社トラストバンクの登録商標です。

山都三大そばまつりのクラウドファンディングはコチラ。

福島県喜多方市

喜多方市には、良質な水と肥沃な土壌を活かしたたくさんの〝おいしさ〟としだれ桜、ヒマワリ、ヒメサユリ、福寿草などのたくさんの花の〝うつくしさ〟が揃っています。

Writer西山 綾加

岐阜県出身。学生時代からイベント制作に携わり、制作会社勤務を経て、旅行会社に転職。社会人2年目、巡り合わせでライター業を始める。音楽コミュニティー「SHAKE HANDS」所属。座右の銘は「袖振り合うも他生の縁」。新たなご縁を求めてひとり旅に出ることが趣味。