バーチャル佐渡金山で金鉱石を採れ!
“あつ森”に突如現れた「さどが島」の舞台裏 (2)
昨年12月、新潟県佐渡市が”あつ森”内に開設した「さどが島」。“あつ森”史上、国内の離島の自治体では初の試みとなる「実在する島を作成する」プロジェクトは、公開初日に約7,800名ものプレイヤーが来島するほどの反響をみせました。
前編では「さどが島」の制作にまつわるお話を、佐渡市農業政策課の宇治美徳さんに聞きました。もともとは佐渡の魅力を発信するために生まれた「さどが島」。公開後はどのようにプロジェクトが広まったのでしょうか。宇治さん、教えてください!
公開前の10日間でトッカン工事!
長い制作期間を経て12月10日に公開された「さどが島」は、公開されるとSNSを中心に大きな反響を呼びました。
宇治さん「特に反応が良かったのはTwitter。たくさん拡散をしていただきました。驚いたのは、佐渡市のホームページへのアクセス数が急増したことです。『さどが島』へ行くためのIDをホームページ上で公開していたのですが、公開当日は約24,000件、通常時の約120倍ものアクセスがありました。広報の担当者からも驚きと喜びの声があがりましたね。」
▲佐渡市公式ホームページより。
他にも、宇治さんが予想もしていなかったような反響があったそうです。
宇治さん「ゲーム実況をYouTubeに公開している方が多くいらっしゃったのが驚きでした。しかも、佐渡のことを知っている人と知らない人で反応が違うんです。
島のことを知ってる人からは『こんなところまで再現できてる!』と喜ぶのに対し、島のことを知らないプレイヤーは、ゲームをしながら佐渡市の情報を確認。面白いと感じるポイントを、視聴者に伝えてくださっていました。観光客が佐渡をどういったところを魅力に感じるのかがよく分かり、すごくおもしろかったです。」
しかし「さどが島」はなぜここまで多くのプレイヤーの心を掴んだのでしょうか。宇治さんは「さどが島」公開前の10日間で行った作業がキモだったのでは、と振り返ります。
宇治さん「島の公開10日前である11月30日、佐渡市長の定例記者会見で『さどが島』公開の告知をしました。すると記者会見の後、Twitter上では『姫埼灯台あるかな』『あの牛乳屋さんはどうなっているんだろう?』など、佐渡を訪れたことのあるユーザーから実在する名所やアイテムの予想と期待感など、非常に多くの反応をいただいたんです。
なかには『確かにこのスポットが無いと!』と納得できるご意見もあり、大変参考になりまして。公開までの最後の10日間で、大至急SNSで指摘されたスポットを『さどが島』に追加しました。そのひと手間があったからこそ『さどが島』が探検しがいのある島になったのかもしれません。」
ゲーム片手に“聖地巡礼”をしてもらいたい
今回のプロジェクトを通して、宇治さんは「地域の情報発信に大切なことを学んだ」と語ります。
宇治さん「僕たちが知る佐渡の魅力ではなく、外から見た佐渡の魅力も取り入れることが大切なんだ、と痛感しましたね。『島のナカとソトでは見え方が違う』という気づきは、今後のコンテンツを考える上で、すごく参考になりました。
一方で、佐渡の魅力を“佐渡金山”“たらい舟”のようにHP上で紹介している呼称や概要などの大枠だけでの内容では、そこまでの情報で伝達や口コミが止まってしまうんだ、とも感じました。
欲を言えば、名所や観光地の島民が知っている情報として『実はその近くに美味しいものがあるんだよ』とか『名物おじさんがいるんだよ』とか、もっと細かなローカル情報がネット上などに溢れていれば、『さどが島』公開にあわせてエリアの周辺情報をユーザーにキャッチ&リリースしていただきながら、さらに充実した体験を提供できたのかもしれませんね。」
▲「たらい舟」は佐渡に伝わる手漕ぎの舟。観光客にも人気。
「さどが島」公開から1ヶ月半。宇治さんは制作した「さどが島」を、地元の教材としても活用できるのでは、と考えます。
宇治さん「佐渡市では、子供たちに安心・安全な米作りを教える授業やイベントなどを開催しています。『あつ森』を通し、佐渡の里山がより親しみやすい存在になれば嬉しいです。そのために、まずは『さどが島』内にある佐渡市博物館内のマイデザイン*から充実させていこうと思います。
※マイデザイン:あつ森内で、ユーザーが自由にデザインを作れる機能。作成したデザインは、道にしたり、家具の模様、洋服として活用でき、さらに登録したマイデザインのIDを公開すれば、作品を誰もが使用できる機能。
また『さどが島』公開後、『リアル佐渡にもいってみたい』というユーザーの声も届いています。コロナ禍が落ち着いたら“プチ聖地巡礼”のつもりで『さどが島』とリアルな佐渡を見比べていただきたいです。
実は観光客が訪れることを想定して、島の主人公であるキャラクター・トキ坊がかぶっている帽子の型紙も、ホームページで公開しているんです。切り抜いて帽子に貼り、かぶりながら島内を観光してもらえたら、“あつ森”の『さどが島』にもっと近づけるはずです。」
▲「さどが島」のトキ坊(上)がかぶる帽子(下)。切り抜き型は佐渡市ホームページで無料公開している。
地域間の移動が難しく、地域発信や観光のPR活動もしにくい情勢下。バーチャル空間を活用したPRは、物理的な距離を超え、その場所を“体験”してもらえるというメリットがあります。今後、佐渡に限らず全国各地の多くの自治体が、バーチャル空間を活用する可能性もあるのでは?
宇治さん「現地で確かめたくなるようなしかけを用意できれば、バーチャル上でも効果的に現地への接点を築けるんだと『さどが島』を通し痛感しました。『さどが島』を参考にして、バーチャル・プロジェクトを検討する自治体が増えてくれれば嬉しいです。ただ制作に手間がかかることが一つネックなのかなと。簡単に作成できるツールや、地域活用に特化した事業が生まれたら、これから事例も増えるかもしれないですね。」
佐渡の認知度を高めた「さどが島」プロジェクトの他にも、国内ではバーチャル空間を活用した地域活性事例が生まれつつあります。今後、人が自由に旅行・観光を楽しめるようになった時、バーチャルで発信された情報がリアルな空間に、予想外の効果を生み出すかもしれません。
「さどが島」夢番地はこちら
[DA-2797-3242-0564]
- Writerfull-sato.com編集部
- https://full-sato.com/
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