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楽しみながら地域を守る! 新時代のアミューズメントパークnuovo (1)

まるでアトラクションのような重機操縦! 楽しみながら防災が身につく、新時代のアミューズメントパークnuovoとは? (1)

ヒト 全国に笑顔の輪を広げる民間団体・一般財団法人日本笑顔プロジェクト
トコ 災害のダメージから復旧していく町
コト 楽しみながら防災を学べるアミューズメントパーク

パワーショベルで掘削したり、全地形対応車(ATV四輪バギー)で荒地を走ったり…。一見すると工事現場のようですが、これは長野県小布施市にある、ライフアミューズメントパーク「nuovo(ノーボ)」で、楽しみながら「防災」を学ぶ様子です。遊休農地を活用して作られたこちらの施設では、なんとたった2日間で重機オペレーターの資格までゲットできてしまいます。

しかし、一体なぜこんな施設ができたのでしょうか?そもそも、重機を操作することが、なぜ防災に繋がるのでしょう? nuovoを運営する、一般財団法人日本笑顔プロジェクト代表・林映寿さんにうかがいました。

▲一般財団法人日本笑顔プロジェクト代表・林寿さん。

 

重機オペレーターが足りない!

林さん率いる日本笑顔プロジェクトは、2011年、長野県小布施町を拠点に設立した、各種災害の被災地で支援活動を行う民間団体です。

▲日本笑顔プロジェクトの仕組み。全国の寺院・企業を拠点に、災害が起こった際、非常食をはじめとする物資を円滑に被災地へ提供する仕組みを整える。

あらゆる被災地に物資や人員を派遣してきた林さんたちが、nuovoを立ち上げるきっかけとなったのは、2019年10月東日本を中心に猛威をふるった令和元年東日本台風(台風19号)でした。

林さん「台風19号で小布町では河川が決壊。約30戸の住宅が浸水、果樹畑等と甚大な被害を受けました。復旧作業では、ボランティアの方がたくさん来てくださり、スコップで泥を掻き出していくんですが、これがものすごく疲れる上に効率が悪いんです。行政に頼るだけではなく、民間の僕たちにも何かできることはないかを考えた結果、重機ボランティア隊の結成と重機の募集を始めることにしたのです。」

しかし、林さんたちはある問題に直面します。

林さん「重機は集まっても、オペレーターが足りなかったのです。今回ボランティアで長野へ来てくださった方は、災害ボランティアが約6万5000人、農業ボランティアが約6700人に対し、重機ボランティアは約600人と、重機ボランティアは他のボランティアに比べて圧倒的に少なかったのです。

 自分で自分の地域を守る!「攻めの防災」の必要性

重機を操縦することができれば、人力よりも効率良く作業を進められるにもかかわらず、肝心の操縦士が不足している現状に、林さんは「防災への意識が変化した」といいます。

林さん「世の中絶対に災害は起きるんです。僕たちの土地もまさか被災地になるとは思ってもみなかったので、誰もが明日、被災者になる可能性があるんだと実感しました。

しかもこの先もっと広範囲で災害が起きたら、各地からボランティアも来られない状況が起きると思ったのです。災害を前にして人間は無力です。そうなった時に備え、自分で自分の地域を守れるようになる必要があると思いました。」

被災を経験し、「攻めの防災が必要だ」と感じた林さんは、防災を日常的に、かつ楽しみにながら体験できる場所を作ることを思いつきます。そしてすぐに具体的なイメージをイラストに起こし、2019年12月にnuovo構想に着手しました。nuovoとは、イタリア語で「新しい」という意味。林さんはそこに「農業」+「防災」の意味も込めました。

▲「平時を楽しみ有事に備える」ライフアミューズメントパーク・nuovoの仕組み。3トン未満の建設機械は2日間で資格取得も可能

林さん「nuovoは1つのスキームで2つの社会問題を解決するというコンセプトがあります。1つは防災。有事に効率よく復旧作業に取り組める人を育てるため、2日間で重機資格を取得できるコースを作りました。

もう一つは農業の後継者不足。有休農地や荒廃農地が増える中で、そういった遊休地を利用することによって農地も活用もできますし、そこに野菜の備蓄をすることで災害時に活用することができると考えました。でも、もっと大切なのは、その2つを楽しみながらやるということです!」

21世紀型の新アミューズメント!?nuovoで体験する楽しい防災

しかし、「防災」と聞いて楽しいイメージを想像できる人はなかなかいないのでは…。一体nuovoではどんな防災体験ができるのでしょうか?

林さん「やはり、防災というキーワードで興味を持っていただくのは難しいです。明日は防災訓練だからワクワクして寝られない人なんて絶対いないじゃないですか。(笑)でも、そこまでのモチベーションにさせる仕掛けを作ることはできると思っています。」

▲アームを使ってこんなことも!?まるでアミューズメントパークのパレードのよう

なんと、重機資格取得コースのはじめには、日本笑顔プロジェクトに所属する重機隊が、パフォーマンスショータイムを実施。何台かの重機がシンクロして整列したり、アームを使ってひっくり返りそうになるほど機体を傾けたり。それはまるで某アミューズメントパークのパレードのよう。圧巻のパフォーマンスに、受講者は歓声をあげます。

林さん「nuovoがアミューズメントパークを名乗るのはそこなのです。例えば、重機隊のパフォーマンスはその仕掛けの一つです。農業の部分では、施設内で根菜類を育てているんです。災害時には炊き出し用に使うのですが、野菜は備蓄できないので受講者に採ってきてもらって。畑から抜いたネギをその場でグリルして食べてもらうという贅沢な農業体験もしていただいています。


▲採れたてのネギをその場でグリル。nuovoで栽培した野菜は災害発生時にも被災者の食を支える

こういう仕掛けを作っていくと、受講者が感動してくれるんです。『自分も重機パフォーマンスができる域まで達したい』と思っていただいたり、体験したことをSNS等で発信していただいたりするんです。そうやって口コミがまた口コミを呼んで、受講者が増えていきます。」

▲バギー体験の様子。子供から大人まで、家族みんなで楽しく防災を学べます。

「防災」というワードからはとても想像もつかない仕掛けが満載のnuovo。目標は1000人の重機オペレーター育成。2020年10月に設立し、これまでにすでに200人以上の受講者を育成しました。メディアにも多数取り上げられるなど、注目される中、今年の初めにはなんとnuovoの4輪バギーが初出動します。

来週公開の後半では、nuovoに必要なモノをどのように集めているのか、実際の有事ではどのように役だったのか、といった「nuovoが活躍したエピソード」をより詳しくうかがいます。

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防災を「楽しむ」という視点から構想された新しい体験型ライフアミューズメントパーク。

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Writer西山 綾加

岐阜県出身。学生時代からイベント制作に携わり、制作会社勤務を経て、旅行会社に転職。社会人2年目、巡り合わせでライター業を始める。音楽コミュニティー「SHAKE HANDS」所属。座右の銘は「袖振り合うも他生の縁」。新たなご縁を求めてひとり旅に出ることが趣味。