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てぬぐいフェス実行委員会

手ぬぐい業界を「未来志向の伝統産業」に。 大阪府・堺市の生産者と消費者のつながりを生む秘訣とは?

手ぬぐい業界を「未来志向の伝統産業」に。大阪府・堺市の生産者と消費者のつながりを生む秘訣とは?

皆さんは、「手ぬぐい」と聞いたとき、何を思い浮かべますか? なんとなく夏の風物詩としての和雑貨のイメージがあったり、剣道などの和のスポーツで使われていたり、ひとまず「日本でつくられていること」の印象は持っているのではないでしょうか。

手ぬぐいの原料は木綿100%、吸湿性・速乾性にすぐれており、肌ざわりがとても気持ちいい、大阪・堺市の特産品。スポーツで流した汗を拭うったり、台所の手拭きといった実用的なことから、インテリアや祭の装身具といった柄を楽しむための文化的なことまで、幅広い用途で親しまれています。

文字通り、地場産業とは原料と地域が持つ技術との結びつきができることで、生まれる伝統産業。しかし、地場産業もつくり手・買い手の双方がいなければ、伝統を残していくことができません。

そんな中、産業の未来をつくるために、堺市の小幅木綿業界に携わる人たちが立ち上げたのが『てぬぐいフェス』。フェスの当日は浴衣の着付けやファッションショーなど、「知る」「体験する」「遊ぶ」の3つを楽しめる催しで、2017年に一回目の開催をしてから3年間連続で開催。2019年にはクラウドファンディングを通じた資金調達も実施しており、堺市から全国各地へ産業の魅力を発信するために様々な取り組みを行なっています。

「伝統産業だけど、新しいことに挑戦していることを伝えたい」と語るのは、株式会社スタジオ・ワットの宮本 基広さん。実行委員長として『てぬぐいフェス』の企画・運営へ参画しながら、自身も手ぬぐいブランド『CHAORAS』をはじめとして、未来志向で伝統産業の現代でのあり方をプロデュースしています。

今回の取材では未来志向の伝統産業をつくる秘訣を宮本さんに伺いたいと思います。

手ぬぐい職人が集まる小さな「会合」

堺市は手ぬぐいの産地として歴史は深く、明治時代まで遡ります。また、大都市である大阪と綿の生産地である泉州の中間に位置していたことから、「和晒し(わざらし」という綿の加工技術が盛んとなり、染色技術が流入してからはより鮮やかな色彩となって手ぬぐいや浴衣生産の産業が発展してきました。

長い年月を経て暮らしの道具として定着していくなかで、どのようにして新しい取り組みがはじまって行ったのでしょうか。

宮本さん:「てぬぐいフェス」を運営しているのは、業界の若手経営者が集う「和継会(わけいかい)」のメンバーが中心です。地場産業を支える若手の経営者達が集まり、懇親と情報交換をする会でしたが、最初の参加者は4人、当時は名前もついていない集まりでした。幼馴染がそのまま稼業継いで仕事をしている繋がりだったり、通っている学区が違っても仕事を通して知り合った仲間もいて、地元の親しい人を集めていくうちに人が人を呼んで、会費制のグループになっていきました。

ただ、せっかく業界人が集まっているのに、情報共有をするだけではもったいない。我々の持つ知識やエネルギーを、手ぬぐい業界の貢献に役立てる事はできないか!?と思うようになりました。

そうして、2016年から1年ほど時間をかけて、2017年に第一回目の『てぬぐいフェス』を開幕。直近開催の第三回目の来場者数は3000人を超え、堺市を代表する一大イベントになったといいます。

宮本さん:和継会の会長がてぬぐいフェスの実行委員長も兼任して、副会長が、翌年の会長になるというルールがあります。フェスに関して特別に組織づくりというものはしていなくて、知れた仲間ですから、日々の業務やコミュニケーションで意識の統一というものはベースとしてできているのかもしれません。

産業の活性化のために必要なのは競合ではなく、協力

かつては手ぬぐいがブームとなり、メーカーが自社ブランドを立ち上げるような時代もあったと言いますが、年々、国内繊維産業の事業者数は減少傾向にあることも事実。数ある企業が協力し合ってひとつの産業を盛り上げていくことに関して、ご自身の考えをこう話します。

宮本さん:もともと、手ぬぐいは決して一社だけで完結して商品を売ることができないというのが背景にあります。「晒し」を染めないと、色鮮やかな手ぬぐいとして売れないし、問屋さんがなければ流通もしません。晒屋さん、染屋さん、問屋さんが分業しあって、はじめて手ぬぐいが売れる。

そして、年々手ぬぐいの生産数は落ちていくなかで、1社だけが勝ち残ったところで産業としては成り立たないんです。もちろん自分も含めて生き残るのに必死ですが、支え合っていかないと業界全体が潤っていかない。

僕たちのような供給する側を成り立たせようと思ったら、やはり需要をつくりださなければいけない。つまり、手ぬぐいが消費者にとって「魅力的なもの」であり続ける必要があります。

「腕には自信ある。うちの晒はどこにも負けない白さがある!」といいものをつくっている矜持はどこの職人さんにもあります。ただ、昔ながらのてぬぐいを昔ながらのまま売られても、今の子には響かないかもしれない。ライフスタイルが変われば、今の価値観に合わせて商品をつくっていきたいと思っています。

生産者と来場者の“手ざわり”が感じられるフェスに

てぬぐいフェスはマーケットを大きくしていく意味合いもありますが、生産者にとってもお客様の顔をみたり、生活の中での手ぬぐいの利用シーンを考えるためのとても良い機会だと言います。最後に、てぬぐいフェスで大事にしていることや展望をお聞きして、インタビューを締めくくります。

宮本さん:新しい世代の人達がフェスにきて、「伝統産業だけど、新しい事に挑戦してるんだな」「自分の生活には無かったけど、これからは使ってみようかな」と思ってもらえるようなきっかけをつくっていきたいんです。

一方で僕たち職人も、当日のワークショップを通じて喜ぶ子供の姿などを直接見る事によって、職業に対するやりがいや誇りを改めて感じる良い機会になる。実際に手に取って魅力を感じてくれる機会をつくることで、両者にとって新しい発見がある。そんな祭典にしていきたいと思っています。

私が執筆を終えて一番最初に思ったことは、「身近にあるものに想いをもっと馳せてみよう」ということでした。需要と供給はどちらか片方がなければ成立せず、伝統を引き継いでいくということは、消費者である自分たちにもできることがある。

この商品は、どんな場所で、どんな人が、どのような想いでつくっているのか?また、自分たちがつくったものは、どんな人の手に取られるのか?フェスを通じて、消費者と生産者の想いが交差する。いつの時代も、この両者の出会いが、伝統に新しい価値を与え続けているのだと思います。

Writerfull-sato.com編集部
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